子どもの好き嫌いに頭を悩ませるパパママは少なくありません。
今回のコラムでは、食のカウンセリングを通して「偏食・小食で子どもが食べてくれない…」というご両親の悩みを聞いてきた食育カウンセラーが解決のヒントをお届けします。
子どもが食べない理由 3つ
子どもが食べない理由は大きく3つあります。それは
- 精神的な理由
- 機能的な理由
- 感覚的な理由
です。ひとつひとつ、分かりやすくお伝えしますね。
その1 精神的な理由
突然ですが、クイズです!
以下の3つ項目を「人間の本能の優先順位が高い順」に、並べ変えてみてください。
- 食べること
- 苦痛を避けること
- 感情的に満足すること
…考えてみましたか?
正解は
苦痛を避けること > 食べること > 感情的に満足すること
という順番です。
ここで着目して欲しいのは「食べること」よりも「苦痛を避けること」を人間は本能的に優先しているということです。
つまり、食べることに対して何かしらの苦痛を感じている場合は、食べることすらも避けてしまいます。
「食べなさい!」と強く言ってしまうことが、子どもにとって苦痛になる場合もあります。食べること自体を嫌いにならないように、楽しく食べるためにはにはどうしたらよいか見直しましょう!
その2 機能的な理由
子どもの口腔機能は未発達です。機能的な理由によって、食べられないことに繋がるケースがよくあります。
具体的には
- 唇を閉じる動きができるか
- 舌を上下左右前後に動かせるか
- 奥歯を使ってすりつぶせるか
などのお子さまの口腔機能と食べ物の
- 大きい・小さい
- かたい・やわらかい
- 粘りや繊維のある・なし
などのミスマッチが起きていると、うまく食べられません。
- 喉に詰まらせてしまう
- 柔らかいものしか食べられない
- 噛まずに丸呑みしてしまう
- 口に溜め込んで進まない
- 食べるのが遅い
などの様子が見れらる場合は、機能的な問題が大きいかもしれません。家庭での調理形態に気をつけてみてください。
食形態を考える5つの観点
- 大きい・小さい
- かたい・やわらかい
- 粘りがある・ない
- 繊維がある・ない
- 水分がある・ない
これらが「すぎる」と食べにくくなります。
(例:大きすぎる、小さすぎる、かたすぎる、やわらかすぎる・・・)
食事中の子どもをよく観察し、調整してあげましょう。
それでもなかなか解決しない場合は、歯科医師や言語聴覚士などの専門家に相談してみるのも手です。
その3 感覚的な理由
「感覚的に受け付けない」ものは大人でもありますね。もう少し具体的にお伝えすると
- 人より味を強く / 薄く感じる
- 冷たい / 熱いを強く感じる
- 胃が痛い
- もっちり感が気持ち悪い
- 見た目がグロテスクに感じる
- 食べているときの音が気になる
- 食器が触れた感じが気持ち悪い
- 口周りに触れられると強い嫌悪感がある
- 内臓の感覚が鈍麻で空腹を感じない
など、感覚器官からの情報を脳で処理する際の不快感から、食べられない場合があります。
自閉症の子に極端な偏食が多いのは、感覚の過敏(人よりも強く感じやすい)や鈍麻(人よりも感じにくい)が強いケースが多く、食べることへの困難につながりやすいからです。
大切なのは好きな感覚を見つけて、そこから少しずつ受け入れられる感覚を広げていくことです。間違っても苦手なものを無理強いしてはいけません。
好きな感覚を見つけるために食事記録をつけるのがおすすめです!食べられるものをリストアップして
- どんな形(切り方)
- どんな色
- どんな調理方法
- どんな温感(温かい・冷たい)
- どんな食感
というところから「好き」や「受け入れられる」という感覚を発見していきましょう。
好きなものから少しずつ形や色や調理方法を変化させてみます。今、受け入れられるものの感覚を少しずつ広げていくようなイメージです。
まとめ
いかがでしかた?
大切なのは「子どもが食べられない理由」を考えることです。ここで「わがままだから食べない」と捉えてしまうと、食を広げることは難しくなってしまいます。
その上で
- 精神的な理由の場合
→食べられなくても大丈夫という安心感を育む - 機能的な理由の場合
→口腔機能を少しずつ獲得していけるようにサポートする - 感覚的な理由の場合
→好きな感覚を知り、徐々に食べられる範囲を広げていく
という点を意識して、少しずつ食べられるものを増やしていきましょう。
次回コラム更新は1月11日を予定しています!お楽しみに。
山口健太
『きゅうけん|月刊給食指導研修資料』代表・編集長
一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会代表理事
「会食恐怖症」の当事者経験から「食べない子」専門の食育カウンセラーに。「食べない子」に悩む保護者、学校・保育園の教員などにメッセージを伝えている。著書に『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)など。