子どもの好き嫌いに頭を悩ませるパパママは少なくありません。
第1回目「子どもの好き嫌いは『わがまま』ではない!? 食べられない理由を解説」では、子どもが食べない理由とその対応について紹介しました。
一方で、どんなに食べない理由を考察しても「食べることが楽しい」と感じていなければ食を広げていくことは困難です。
今回は子どもが「食べることが楽くなる」方法についてお伝えします。
食を広げる土台となる「食べることが楽しい」を作る方法
食べることが楽しくないと「食べなさい」と言われるから仕方なく口に運ぶという受け身の状態になります。
食べることを楽しめるからこそ、自分から興味を持ち、自分から食べることに繋がります。
これは食の話だけではありませんよね。
例えば、勉強でも、仕事でも、スポーツでも、それに取り組むことを楽しいと感じているかどうかで、能動的なのか受動的なのかが決まりますし、その後の成績の伸びは大きく左右します。
ですから「食べることが楽しい」という状態こそが、食の広がりの一番の土台になるのです。
楽しい食事とは『安心』があってこそ
「楽しい食事」という言葉を耳にした時、最初に思い浮かぶのは「楽しく会話をしながら食事をすること」ではないでしょうか。
『楽しい』の土台には『安心』があります。人間関係でも安心し合える関係性があってこそ楽しく笑いあえるものだと思います。
これは食も一緒です。「楽しい食事」の土台には「安心できるかどうか」が大きく関わってきます。
食卓における心理的安全性
以前、とある保育士さんがこんなことを言っていました。「『食べたくない』とか『好きじゃない』と言えない食卓は望ましい環境ではないよね」と。
私はこれを聞いたときに「食卓における心理的安全性」という言葉が頭に浮かびました。
『心理的安全性(サイコロジカル・セーフティ/psychological safety)』とは、近年ビジネス書などでもよく目にする言葉です。
心理的安全性を分かりやすく定義すると「ありのままの自分でも、安心してその環境に身置けるかどうか」のことで、最高のチームを作るときに大切な土台になります。
Google社などがこれに注力してチーム作りをしていることが注目され話題になりました。
- 知らないことがあっても大丈夫
- できないことがあっても大丈夫
- 間違い(ミス)をしても大丈夫
- 人に迷惑をかけてしまっても大丈夫
- 落ち込んでネガティブになっても大丈夫
という環境がチーム内で保たれていると「心理的安全性が高い」と言えます。
「食べられなくても大丈夫」という前提が安心を作る
「食べられない」ことに対しても心理的安全性は大切です。
私はこれまで食育カウンセラーとして「食べられなくても大丈夫という環境を作ることが、安心に繋がり、食を広げる一番の土台になる」ということを伝えてきました。
「苦手な食べ物にも、積極的に挑戦させなければ」そう思う方もいるかもしれません。確かにそれも大切なことです。
しかし、その前に確認したいのは「『食卓における心理的安全性』は保たれているか?」です。
具体的には
- 「食べられなくても大丈夫」と言える環境かどうか
- 「これ、苦手」とか「食べたくない…」と子どもが自由に表現できる環境かどうか
一度振り返ってみましょう。
まとめ
食べない子の接し方で迷ったら思い出してほしいこと。それは自分が子どもにとって「一緒に食事をしたい人であるか」ということです。
いつも怒ってばかりの人とは、一緒に食事をしたくはありませんね。子どもの気持ちを認め、成長はしっかりと言葉で伝えましょう。
「楽しい食卓」が世の中に増えていけばといいなと祈っています。
山口健太
『きゅうけん|月刊給食指導研修資料』代表・編集長
一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会代表理事
「会食恐怖症」の当事者経験から「食べない子」専門の食育カウンセラーに。「食べない子」に悩む保護者、学校・保育園の教員などにメッセージを伝えている。著書に『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)など。