あなたは、『モンテッソーリ教育』をご存知ですか?
将棋の藤井聡太二冠や世界の著名人が受けた教育として、モンテッソーリ教育は様々なメディアで取り上げられていて、より一層注目を浴びている教育です。
基本となる考え方を理解すれば、おうちの親子の時間にモンテッソーリ教育を取り入れることは可能です。子どもと一番長い時間を接しているママこそ、モンテッソーリ教育の視点を持つことができたら、親子の生活がもっと楽しくラクにスムーズになるでしょう。
この連載では、モンテッソーリ教育をおうち時間に取り入れるためのアイデアと方法を紹介します。
今回の記事では、ママの悲鳴を解決する強い味方、モンテッソーリ教育の中でも有名な用語の一つである『敏感期』について紹介します。
『敏感期』とは
あなたは、わが子がティッシュペーパーを箱から延々と引っ張り出して困った経験はありませんか?
しかし、子どもたちはママを困らせたくてティッシュペーパーを引き出しているのではありません。どうして引き出しているのか分かれば、ママは怒ることもなくなり、子どもとの生活がより楽しくなるでしょう。
そのことを知る一つとなるキーワードが『敏感期』。
『敏感期』とは、もともとは生物が発育途中の特定の時期に特定の刺激にとても敏感になる時期を指す生物学の言葉でした。
敏感期が発見されたのは、生まれたばかりでまだ目が見えない蝶の幼虫は、明るい光に向かって進むことで木の先端にある柔らかい新芽を食べることができる向光性からです。
ちなみに幼虫は、やがて成長して硬い芽を食べることができるようになると、向光性は消失して光に向かって進むことはなくなります。
なぜティッシュペーパーを引き出すの?
子どもがティッシュペーパーを引き出し続ける話にもどりましょう。
引き出し続ける理由は、敏感期の一つである『運動の敏感期』を子どもが迎えているからです。
親指・人差し指・中指をつかいたい、3本の指を上手につかって引き出す動きを習得したいから、子どもはティッシュペーパーを延々と引き出しているのです。
自ら課題を見つけて取り組んでいる子どもからティッシュペーパーの箱を取り上げたら、せっかくの成長のチャンスを逃してしまいます。でも、ティッシュペーパーをたくさん引き出されるのはママも困りますよね。
そんな時の解決策
- 敏感期の今だけと割り切って、思い存分引き出してよいことにする。
出されたティッシュペーパーは、別の袋にしまって使用すればいいと考えます。 - 家にあるおもちゃで、似たような手の動かし方をするものを探す。
- 似たような手の動かし方をするものを、つくる。
児童館や子育て支援施設のおもちゃが参考になることもあります。訪れた際には、どんなおもちゃがあるか、どんなおもちゃに子どもが興味を持つか、チェックしてみてください。
ティッシュケースの箱に長い布を入れて引っ張り続けることができるようにしたり、タオルハンガーやキッチンペーパーの芯に布を巻きつけて引っ張り続けられるようにしたりするなど、家にあるものや100円ショップで買えるものだけでも、子どものやりたがる動きを実現するおもちゃ・小物が十分に再現できるでしょう。
同じ場所で子どもと過ごす時間が長い家族だからこそ、気づきやすいことがあると思います。
モンテッソーリが発見した敏感期
主な敏感期 敏感期が現れる年齢 (個人差あり)
敏感期の子どもたち 運動の敏感期 0歳~2歳半 2歳半~4歳半
基本的な動きを獲得する 獲得した動きを自分で調整・洗練させていく
秩序の敏感期 0歳~4歳 (2歳前後がピーク)
順序・場所・所有・習慣などが狂うと嫌がる いつもと同じにこだわる
感覚の敏感期 0歳~2歳半 2歳半~5歳
五感を働かせて印象を丸ごと吸収する 印象を整理して五感を洗練させる
言語の敏感期 (話し言葉=音声)
胎児期~6歳 環境にある言語を丸ごと吸収できる 言語の敏感期 (書き言葉=文字)
3歳~5歳 (4歳前後がピーク)
4歳~6歳
(5歳前後がピーク)
文字を書くことが大好き (爆発期と呼ばれる)
文字を読んで理解することが大好き
数の敏感期 4歳~6歳 身の回りにある数的なものに興味を持つ。特に数えることに熱中する。 文化の敏感期 6歳前後~ 想像力が発達し、より広い世界へ関心が向く 注:年齢の幅や敏感期の表記は文献によりやや異なる場合があります。
「マンガでやさしくわかるモンテッソーリ教育」 田中昌子 日本能率協会マネージメントセンター より
敏感期から考える 子どもの行動の理由
敏感期を知っていれば子どもの行動の理由が分かって、対処の仕方を工夫することができます。
成長のチャンスを生かすことができて、子どもとの生活がより楽しくなり、ママも子育てのストレスが少なくなるでしょう。
例えば、
- 歩道のへりの上を歩きたがるのは、バランスをとって歩きたい運動の敏感期のためかもしれません。その道が車の通行量が多かったら、安全な場所で同じ行動をやらせてあげましょう。
- 訪ねてきたおじいちゃんが食卓のパパの席に座ったら、子どもが怒ったら、秩序の敏感期だからいつもどおりを大切にしたいのかもしれません。
- 赤ちゃんが話をする大人の口元を見つめるのは、言語の敏感期のためといわれています。赤ちゃんはまだ言葉を理解していないと考えないで、どんどん話しかけてあげましょう。お腹の中にいるときからは赤ちゃんは言葉を聞いています。
- ママの洋服を触りたがるのは感覚の敏感期だからかもしれません。いろいろな触り心地の布を用意してあげましょう。
敏感期を逃しても
子どもが母国語を身に付けるようにはスムーズではなくても、大人も外国語を習得することはできるように、敏感期を過ぎても身につけれるものは多くあります。
もしお子さんが敏感期を過ぎていても、悲観しすぎないでください。「ちょっと遠回りになっただけ」と知ることでママの心に余裕が生まれたら、子どもも安心して過ごせるでしょう。
敏感期のようなモンテッソーリ教育の視点があれば、親子の生活がより楽しくラクにスムーズになります。次回は、おうち時間にモンテッソーリ教育を取り入れるときに子どもをどのように援助したらよいか紹介しますね。