幼児期になると、自分の主張を表現できるようになり、食事面では偏食や食べるのに時間がかかるなどのお悩みがよく聞かれます。
原因は様々ですが、その理由の一つとして「うまく噛むことができない」ことが影響している場合もあります。
このコラムでは、幼児期のお口の発達を促す習慣をご紹介します。
▼前回コラム
幼児期につくられる!将来の健康の土台
人間の脳の発達において、3歳までに大脳・小脳・脳幹などの主要な部分がつくられます。その後、6歳までに大人の脳の約90%まで成長し、小学校を卒業する12歳でほぼ完成するといわれています。
幼児期の日々の習慣が、お口・身体作り、ひいては将来の健康に繋がっていきます。
食事だけではない!『噛んで食べる』が大事な理由
お口の発達を促すために、食事の工夫と食環境について意識したいポイントは4つです。
1)食材を小さくしすぎない
お子さんがあまり噛まない、食べないという場合、食べやすいように食材を全て小さく切ったり、やわらかいものばかりの食事になっていませんか?
ぜひ積極的に取り入れてほしいことは、前歯と唇を使ってかじり取るという動作です。子どもは前歯と唇で食材をかじることで一口量を覚えます。そしてそれが「どのくらい噛む必要があるか」を考えるセンサーにもなり、脳への刺激になるのです。
小さなもの、やわらかいものばかりでは、あまり噛まずに丸飲みしてしまう原因の一つになります。前歯と唇を使ってかじり取り、
お口を使う経験が少なくなってしまうと、あごの発達、歯並びへも影響が出てきます。そうすると、「固いものは噛めないまま」「食べられないから小さく切る」を繰り返し、結果お口の発達の妨げになってしまうことになります。
調理の際、カレーライスなどあまり噛まずに食べられる料理でも、具材を大きく切り野菜をかじって食べられるように工夫してみてください。子どもの噛む回数が増え、お口全体を使って食べることができます。
ただし、幼児期の前半のお子さんと後半のお子さんでは、歯の本数、噛むことができる固さも異なるため、こんにゃくのように弾力があるもの、きのこ、ワカメなど噛み切りにくいものなどは、食材によって小さく切ったほうが安全で食べやすい場合もあります。
発達過程に合わせて、お子さんの前歯、唇、奥歯や五感をフルに使って食べられるよう調整してくださいね。
2)食事の姿勢を見直す
幼児期においても食べる姿勢はとても重要です。正しい姿勢の一番のポイントは足元を安定させることです。
足裏が床に着かずブラブラした状態では足で床を踏ん張ることができず、噛む力が20%減り、噛む回数は1/4になると言われています。
ひざが90度に曲がって足裏が床や足置きに着き、ひじは90度でテーブルにのる高さに調整しましょう。背中は猫背にならないように、やや前傾姿勢になることで足を踏ん張ることができ、お口の筋肉や舌を動かしやすくなります。
成長に合わせて足の置き場が調整できるイスを使用する、または大人のイスを使う場合は踏み台などで足元を安定させることがおすすめです。
3)食事環境を整える
人は五感を使って得た情報で「おいしい」と感じます。その中でも大きな割合を占めるのが『視覚』です。
食事中にテレビを見ながら食べることが習慣になってしまうと、視覚情報はほぼテレビに取られてしまうので、食事に集中して噛むことができなくなり、味や香り、食感など五感を感じにくくなってしまいます。
コミュニケーションの手段としても誰かと一緒に食事をするのは大切なこと。食事のおいしさや会話の楽しさを幼児期にたくさん経験させてあげたいですね。
4)体を動かす
噛むためのお口を育てるには、食卓だけではなく日常生活の中でもできることはたくさんあります。
お口と全身の筋肉は繋がっているので、お口育ては全身の使い方も大切です。お口や足、体を使った遊びを積極的に取り入れていきましょう。
次回は、具体的に噛んで食べるお口を育てるためにおすすめ食材と体やお口を使った遊びのポイントをご紹介します。
管理栄養士/離乳食アドバイザー/幼児食アドバイザー
病院勤務と特定保健指導業務に携わり、延べ2000人以上の栄養サポートを実施。これまでの経験と自身の2人の育児を通して、「生活習慣病予防と、子どもやママ自身の健康をサポートしたい」という思いのもと現在はフリーランスとして活動。行政の離乳食教室、オンライン離乳食・幼児食講座や子どものアレルギー対応・米粉のおやつレッスンなどを開催。