お子さんの歯並びやお口ぽかん、避けたいと考えている保護者の方も多く、近年日本でも注目され始めたお口育て。
実は授乳期から始まっていることをあなたは知っていましたか?
子どもにとってお口の働きは、食べる・話す・呼吸するといった生きるために必要で大切な機能と言われています。お口を育てる時期は、実は赤ちゃんの時からすでに始まっているんです。
このコラムでは、授乳やミルク、離乳食を通して育まれるお口の機能から食事のポイントをお伝えします。ぜひ、参考にしてみてくださいね。
目次
子どものお口の機能について
子どもは、歯や口を使って食事を通して感情を表現していくことは、心身の健全な発育を促すことにも繋がります。
お口の機能は自然に獲得されるものではなく、出生後に学習されて獲得されるものであることが近年の研究でわかってきました。
間違ったお口の使い方を覚えると危険がいっぱい
お子さんのお口がぽかんとあいてしまうことはありませんか?実は、間違ったお口の使い方を覚えてしまっている可能性があります。
口呼吸が癖付いてしまうと起こること
- 歯並びが悪くなる
- 口が乾くので菌がつきやすく虫歯になりやい
- 風邪(インフルエンザやコロナなど)にかかりやすい
- アレルギーになりやすい
- 睡眠や呼吸も浅く疲れやすくなる
などの症状が出ると言われています。
口が閉じれず、口呼吸をする『お口ポカン』を続けると、口腔周囲筋のバランスが崩れるため、歯並びなどの見た目だけでなく、しっかり噛んだり飲み込んだりすることができません。
また近年、前歯で噛めず奥歯で食べる子ども、歯の隙間がない子どもも多くなってきています。
『お口ポカン』(口呼吸)にならないために気をつけたいこと
その多くが『食形態』が子どもに合っていないことが原因と考えられています。
各成長のステージごとにポイントをお伝えします。
①授乳・ミルク時
まず授乳時の抱き方、飲ませ方についてご紹介します。
横抱きの時に気をつけるポイント!
- 頭と首がよじれないこと
- 赤ちゃんの両手がお母さんの脇などで挟まないこと
- 足を宙ぶらりんにしないこと
- 首は曲げずしっかり支えること
これらのポイントをおさえましょう!不安なママは助産師さんにご相談くださいね。
歯は生えていなくてもこの時期からお口育ては始まっていますので、浅飲みにならないように気をつけましょう。筆者の反省ですが、ついスマホを見ながら授乳することがありました。しかし、『ながら授乳』は浅飲みの原因になります。
また、この時期はコミュニケーションを育む大切な時期でもあるため、赤ちゃんをしっかり支えて目を合わせ「おいしいね」「いっぱい飲んでね」と声かけしながら飲ませてあげてくださいね。
②抱っこ紐
長時間抱っこ紐をつけていると重力で抱っこ紐が下がってきてしまいます。赤ちゃんが寝てしまった時、頭部が後屈し、お口がぽかんとあいている赤ちゃんをよくみかけます。
赤ちゃんが寝たときは、首を支えるだっこ紐のポジションに戻しましょう。
③食事のポイント
食べる姿勢は足指が地についている『足底接地』で、味覚を育てる時期でもあるため薄味にしましょう。濃い味を覚えると噛まずに丸呑みしてしまいます 。
季節の旬のものは、栄養価が高く、体に吸収されやすいです。また、水分や甘味もあるため、茹でる、蒸すだけで美味しく食べてくれます。
離乳食初期 口唇食べ期 ごっくん期(5〜6ヶ月)
上唇をしっかり鍛える時期です。
- スプーンを正面から水平に入れてまっすぐ引く
- 上あごに押し当てて落とさないように
- 飲み込んでから次の一口をあげましょう(早食いや、丸呑みの原因になるためです。)
離乳食中期 舌食べ期 モグモグ期(7〜8ヶ月ごろ)
舌が上下に動く時期です。
- 舌を上あごにつけて潰せるかたさ
- スプーンは舌の先端にのせるイメージで、お口の奥まで入れない
離乳食 歯ぐき食べ期 かみかみ期(9〜11ヶ月)
舌が左右に動いたり、前歯でかじったり、一口量を知る時期です。また、手づかみ食べが始まる時期でもあります。
「こぼされるのが辛くてスプーンであげている」「いつまで食べさせなければいけないのだろう」とさまざまな理由で悩むママが多いです。
食べる意欲を育てる『手づかみ食べ』
手の指を使うことは脳の発達にも良いとされています。自分で食べたい時期でもあり、口に入れることでこぼさず食べることを覚えていきます。
離乳食完了期に感覚の鋭いお口を使って、いろんな硬さや匂いなどの五感を味わい、多くの食材に触れておくことは、偏食を防ぐといった報告もありますのでどんどん手づかみさせてあげてください。
離乳食が進まないときは、適切な食形態になっていないことがあります。子どもの発育には個人差があるため、本通りにはうまく行かないこともあります。月齢はあくまでも目安です。
丸呑みになっているときは離乳食の硬さを次のステップへ変えてみましょう。
なかなか飲み込めない時は離乳食の硬さを戻してみましょう。
手づかみ食べの時期は親子で食事を楽しもう
茹でた野菜をスティック状にしてお皿に置き、おにぎりなどを添えてOK。あとはママもご自分のご飯を用意して一緒にごはんを食べてみてください。
その際、細かく野菜を刻みすぎないことがポイントです。 自分で食べてくれるとママも少しラクになると思います。
正しい水分の取り方
離乳食は食べる練習をしている時期です。
離乳食を水分で流し込まないようにしましょう。食べ終わってから水分を取らせてあげてください。
口呼吸予防にもつながる正しい飲み方
- スプーンですすりのみ
- コップのみ
- ストローマグ
この順番がおすすめです。
口をつけるものが、乳首からコップに変わることで飲む時の唇や舌の動きが変わります。
ストローはおっぱいやミルクと同じ飲みかた(乳児嚥下)をするので、正しい飲み方(成人嚥下)に移行するには、白湯や味噌汁、スープなどをティースプーンを横にして飲むすすりのみから挑戦しましょう。
お家にいる時は『すすりのみ』や『コップ飲み』、外出時は『ストローマグ』など、場所によって使いやすいものを選んで挑戦してみましょう。
まとめ
いかがでしたか。赤ちゃんは、ママのお手本をみて学習していきます。
忙しい毎日ですが週末だけでも食卓を囲み、コップで飲む姿、食べる姿をみせてあげてくださいね。
次回は、2024年6月17日公開です!お楽しみに!
(文)小牧圭美/Kiyomi Komaki
歯科衛生士歴23年 二児の母。
歯科医院勤務後、歯科衛生士養成校にて10年以上教育に携わり、担当患者数は歯科診療補助・歯科予防処置を含め、40,000人以上。結婚・出産後に退職し、離乳食をきっかけに食育インストラクターや健康咀嚼指導士を取得。介護士として施設で働く経験も持つ。
現在は、現役の歯科衛生士として大学で歯科衛生士教育に非常勤で携わりながら、乳幼児健診も行う。また、自身の経験から必要性を感じた人財育成として専門家へのコミュニケーション研修や教育機関、介護施設でお口の大切さを伝える講師をしている。
2022年より阪神梅田本店にて、ママそら講師として0歳ママさんを対象に「赤ちゃんのお口育て講座」を開催。2023年には「歯科医院お仕事マニュアル」共著で出版。