今、幼児教育の世界で注目されている『体幹』。コラム「ママ必見!運動も勉強も好きになる子の秘密は『体幹』にあった」では体幹がなぜ大切なのか、そして0歳からの体幹育てがその後の成長にどう繋がるかをお話ししました。
そしてこのコラムでは、その体幹がどうやって育っていくのか、赤ちゃんの発達のステップを覗いてみましょう!
飛び級はない 赤ちゃんの体幹が育つまで
赤ちゃんが歩き出すまでには、遺伝子にプログラムされた、驚くほど緻密な13の運動発達のステップがあります。赤ちゃんは、重力のあるこの世界で生きていくために、これらの動きをひとつひとつ、時間をかけてじっくり経験していきます。
赤ちゃんが行う全ての動きは、歩行するために必要な運動であり、同時に「体幹を強くするトレーニング」です。「ハイハイだけできればいい」なんてことはありません。
人間が発達する上で、飛び級はできないのです。
泣くこともトレーニング!赤ちゃんの13の運動発達ステップ
それでは、具体的に赤ちゃんがどのように体幹を育んでいくのか、13のステップをそれぞれ詳しく見ていきましょう。
- 泣く「体幹の活性化」
赤ちゃんが力いっぱい泣く時は、実はたくさんの息を吸い込んで、力強く吐き出す『呼吸運動』をしています。この呼吸運動は、お腹の力(体幹)をしっかり鍛えて、重力に負けずに体を支える準備になっているんですよ。 - 寝返り「体の中心を学ぶ」
左右にゴロゴロ転がることで、自分の体の真ん中、つまり『体の中心(正中軸)』を感覚的に学んでいます。中心が分かると、バランス良く座ったり、立ったり、歩いたりするための基礎ができていきます。 - うつ伏せ「体を伸ばす力」
うつ伏せの姿勢は、重力に逆らって体を持ち上げる筋力を育てます。肘で体を支える姿勢から、手で支える姿勢、さらには手足を浮かせる『飛行機(エアプレーン)』の動きまで、少しずつ重心がお腹から骨盤に下がり、お座りやハイハイなどの重力に負けない姿勢に繋がっていきます。 - 腹這い「体幹の強化」
お腹を床につけたまま這う『腹這い』は、体幹を左右にクネクネ動かしながら、肩や股関節を大きく交互に使う運動です。左右の体を上手に使い分けるこの動きは、後の四つ這いや歩行に繋がる大切な基礎になります。 - 四つ這い位「空中で体を安定させる」
床から体幹をぐっと持ち上げて、四つ這いの姿勢を取るのが『四つ這い位』です。その場で前後に体重移動をする『ロッキング』という動きが見られるようになったら、いよいよ前に進む準備ができたサインです。 - お座り「重力に負けない体幹」
重力に対して体幹をまっすぐ保てるようになるのがお座りです。四つ這い位から自分で姿勢を変えて座れるようになるのが『ひとり座り』。大人が支えれば生後6ヶ月頃から座れる赤ちゃんもいますが、自力で安定して座れるのはハイハイの時期になることが多いです。 - 四つ這い「肩と股関節の安定」
さあ、いよいよ前進!四つ這い運動では、手と膝を床について体を支えることで肩まわりや股関節が安定していきます。空間で左右の手足を交互に動かす四つ這い運動の延長に歩行があるのです。四つ這いは歩行の原点と言えるでしょう。 - 高這い「足指の発達」
四つ這いの姿勢からお尻を持ち上げ、つま先を立て足の指を使って進むのが『高這い』運動です。お尻より頭が下がるので、ちょっと負荷の高い動きになります。移動手段として使うことはあまりなく、「乗り越える」など目の前の目的のために使われることが多い動きです。 - 両膝立ち「股関節を伸ばす」
四つ這いの延長線上にある両膝立ちは、立つ、歩くための大切な準備期です。股関節をしっかり伸ばして、体幹を保てるようになります。 - 片膝立ち「足・膝・股関節の連動」
両膝立ちから、足首、膝、股関節をスムーズに連動させながら、いよいよ立ち上がるための準備をします。 - つかまり立ち「下半身を強くする」
つかまり立ちでは、スクワットのような動きで、股関節や膝を曲げ伸ばししながら立つ姿勢を保ちます。足の裏全体で踏ん張る『足の裏の感覚(足底感覚)』を高める重要な運動です。 - つたい歩き「足で重心を移動させる」
つたい歩きは、足裏全体で体を支えながら、左右に体重移動する横歩きの運動です。横歩きをしっかり経験することで、その後の安定した歩行に繋がっていきます。 - 歩行「まっすぐ二本の足で歩く」
初めての歩行は、足幅を大きく開いて、左右に体を揺らしながら前へ進みます。だんだん足幅が狭くなり、スムーズに歩けるようになります。
このように、赤ちゃんは自分で体を動かすことで、ひとつひとつの体の機能を着実に身につけていくんですね。
体幹育ては『早さ』ではなく、『順番』が大事!
ゆっくりであっても、着実にステップを踏むことが大切です。先回りして無理な練習をさせたり、ベビーグッズで過度にサポートしてあげたりする必要はありません。赤ちゃんが自分で行っている動きに意味のないものはありません。赤ちゃん自身が行っている大切なトレーニングだと思って、準備が整うまで、『今の姿』を温かく見守ってあげてくださいね。
赤ちゃんの運動を真似っこしてみよう!


次回は、赤ちゃんの体幹が育っていくためのおうちの環境チェックポイントをお伝えしますね。
どうぞお楽しみに!


落田 順子/Junko Ochida
近年は、保育現場への普及にも尽力し、保育園や保育士会での研修のほか、保育士養成大学での学生向けワークショップを通じて保育の質の向上に寄与する。
2022年からは、阪神梅田本店「ママそら」講師として「0歳からの体幹育て講座」を担当。2025年、共著「子どもたちの未来は、関わる大人で変わる~MANA部屋プロたちからのススメvol.1」を共著で出版。