「うちの子、まだ思うように動けないけれど大丈夫かな?」そんな風に感じているお母さんもいらっしゃるかもしれませんね。でも安心してください。赤ちゃんの体の発達には、ちゃんとした順序があるのです。
前回のコラム、「赤ちゃんの運動能力を引き出すおうち環境のヒント」では、赤ちゃんの運動能力を引き出すおうちの環境をご紹介しました。いよいよ今回から、お母さんとできるおうち体幹トレーニングの方法をお伝えしていきますね。
生まれたての赤ちゃんは、自分の体が分からない?
大人にとって、手や足が自分の体の一部だという認識は、当たり前ですよね。でも、産まれてすぐの赤ちゃんは、自分の体をまだ認識していないと言われています。
赤ちゃんが認識しているのは、おっぱいを飲むための『唇』や、床に触れている『背中』だけ、なんていう話もあるようです。
赤ちゃんがじっと手を眺めて舐めたり、足をバタバタさせたりしているのは、意味のない仕草ではありません。全身の様々な感覚を使って、自分の体の全体像を一生懸命つくっている最中なのです。
ボディイメージが育つと、世界が広がる!

赤ちゃんが体を思い通りに動かすために欠かせないのが『ボディイメージ』です。これは、自分の体の大きさや手足の位置、どんな動きができるかを正しく感じる力です。
例えば、車の運転で『車両感覚』がスムーズな運転を助けるように、ボディイメージが育つと、赤ちゃんは自分の体を自由に操れるようになります。その結果、自分でできることや行動範囲が広がり、世界が大きく広がっていきます。
「こんなに楽しいことができた!」という達成感を味わう体験は、「やればできる!」という自信につながり、赤ちゃんの自己肯定感を高めてくれます。
自分の体を上手に使えるようになることは、将来の自立心を育む大切なステップなのです。
3つの感覚で、赤ちゃんのボディイメージを育もう!
赤ちゃんのボディイメージは、毎日の遊びの中で育むことができます。特に大切なのは、次の3つの感覚 ①触覚(さわる)②前庭感覚(ゆらす)③固有感覚(うごかす)を意識した働きかけです。
「さわること」で、体の輪郭を知り
「ゆらすこと」で、体のバランスをとり
「うごかすこと」で、力の加減をコントロールします
これらの遊びを通して赤ちゃんは自分の体を実感し、ボディイメージが発達していきます。さらに詳しく見ていきましょう。
- 触覚(さわる)
お風呂上がりや着替えの時など、赤ちゃんの全身を優しくなでたり、マッサージをしてあげましょう。手のひらや指先、足の裏など、体のすみずみまで丁寧に触れてあげることで、赤ちゃんは自分の体の輪郭や形を認識しやすくなります。
- 前庭感覚(ゆらす)
抱っこされて、ゆっくりとゆらゆら揺れるのは、赤ちゃんにとって安心感とバランス感覚を同時に育む大切な時間です。また、高い高いをしたり、公園のブランコに乗せてあげたりすることで、体が上下に動く感覚や、スピード感を感じさせることができます。
- 固有感覚(うごかす)
自分の体を「どのくらいの力で、どこまで動かせるのか」を感じ取る力を固有感覚といいます。ねんねの時期には、手や足を優しく開いたり閉じたりしてあげるだけでも、体を動かす楽しさを感じられます。はいはいを始める頃になったら、段差をよじ登ったり、トンネルのようにくぐったりする遊びをぜひ促してみてください。
これらの遊びを通して、赤ちゃんは自分の体を「楽しいもの」と感じ、遊びながら自然とボディイメージを育んでいきます。ぜひ、毎日のふれあいの中で試してみてくださいね。
解説画像①3つの感覚あそび
遊びの中に「できた!」を増やそう
いよいよ次回からは実践編!おうちで簡単にできる発達運動『WARAリズム』をシリーズでご紹介していきます。いつもの遊びやお世話が、赤ちゃんの『からだの地図』を広げ、ぐんぐん動ける体へとステップアップする最高のトレーニングに変わります。
「遊びのレパートリーを増やしたい!」と感じているお母さんも、ぜひ楽しみにしていてくださいね。

落田 順子/Junko Ochida
近年は、保育現場への普及にも尽力し、保育園や保育士会での研修のほか、保育士養成大学での学生向けワークショップを通じて保育の質の向上に寄与する。
2022年からは、阪神梅田本店「ママそら」講師として「0歳からの体幹育て講座」を担当。2025年、共著「子どもたちの未来は、関わる大人で変わる~MANA部屋プロたちからのススメvol.1」を共著で出版。