今、目を閉じて、深呼吸をしてみてください。
ゆっくりと息を吐き切ると、自然に私たちの身体のなかに空気が入ってきます。
何の香りを最初に感じましたか?
自分からどんな香りがしますか?
部屋の中は何の匂いがしますか?
私たちは、普段の忙しい生活のなかで、深く呼吸をし、身の回りの香りや匂いにどれだけ心を寄り添わせているのでしょう?
このコラムでは月に1回、実は暮らしと密接している香りについてお伝えしていきます。
第一回目となる今回は『香りと記憶』についてお話いたします。
香りがつなぐ想い出
あなたは、香りで過去の想い出がふとよみがえるといった経験はないでしょうか?
例えば、
- 朝まどろみの中で嗅いだ、お母さんが作ってくれたお味噌汁の香り
- 猫のお腹の何とも言えないあたたかな香り
- お日様の香りがするふかふかの毛布の香り
- 大好きだったあの人の香り
- 夏の気配を感じる草いきれの香り
- 部室の前の少し汗臭い青春の香り
- おじいちゃんが吸っていた、マイルドセブンの香り
実は五感の一つである嗅覚の嗅神経は、記憶を司る『海馬』と直接繋がっています。
香りを嗅ぐことで海馬が刺激され、脳全体が活性化することによって起きる現象です。
(ただこの時大事なのは、作られた香りではなく、天然の香りであることが最も大事なのですが、詳しくは次回コラムで説明しますね)
香りは日常にあふれている
先にお伝えしたような例のように、日常、そして私たちの想い出の中には、香りの記憶はあふれています。
金木犀の香りが教えてくれた生きる歓び
少し私の体験についてお話させてください。
プロフィールにもありますが、私は20代の頃2度重度のうつ病になりました。
一度目のうつ病の時、私は完全に嗅覚を失ってしまったのです。
この世界から香りが消えてしまったら・・・想像してみて下さい。
それは、とてつもなく味気なく虚しい世界です。
香りがない世界に急に連れて来られて不安でしょうがなく、生きる気力も失いかけていた時、ふと、金木犀の香りが私を優しく包んでくれたのです。
実は金木犀の香りは私にとって、優しかった祖父母との想い出、飼い猫のリンと一緒に縁側でお昼寝をした想い出そのものなのです。
金木犀の香りは、まるで『陽だまり』みたいで、一瞬にして生きる歓びに満ち溢れていたあの頃の世界へと連れて行ってくれたのです。
不思議なのですが、この時から『香り』が私のなかに戻ってきたのです。
あなたのなかにも宝物のような想い出の香りがある
あなたの中にも必ず想い出の香りがあるはずです。もしかしたら今すぐに思い出すものではないかも知れません。
どんなに寂しい夜があっても、
子育ての最中、社会から取り残されているように感じる時があっても、
友達がどんどん前に進んでいるように見えて焦燥感にかられた時も、
ふと足を止めて、深呼吸をしてみてください。
香りと共にそこには、優しくあたたかい記憶があります。
あなたを一瞬にして陽だまりのような世界に連れて行ってくれます。
想い出は『ひらめき』と『気づき』の宝庫
さらに香りと記憶の効果はそれだけではありません。
『温故知新』という言葉があるように、過去の記憶を呼び起こすことで過去の経験をたくさん引っ張り出してくれるので、『ひらめき』を刺激し、「あんな方法もあった」「こんな方法もあるかもしれない」と、多くの『気づき』を与えてくれるのです。
香り(アロマ)はその記憶を呼び起こすお手伝いをしてくれることでしょう。
そしてそれは『ひらめき』や『気づき』に代わり、あなたの理想を手に入れる手助けとなることでしょう。
オススメのエッセンシャルオイル
そして、もしあなたが日常の香りにプラスアルファで、エッセンシャルオイルを使用しようかなと感じているのであれば、まずは懐かしいような優しい気持ちになるようなものを選んでスタートしてみてはいかがでしょうか?
ちなみに私はゼラニウムやマージョラムの香りがそれにあたります。
まずは自分の感覚を何よりも大切に、あなたにとって宝物の香りを見つけてみてくださいね。それはあなたの側にそっと寄り添い、力をくれます。
あなたはけっして一人じゃないよ。
いつだってあたたかいあの時の記憶はあなたのなかにあるから。
高木 理々/Riri Takaki
フランス式アロマ「biossentiel」 技術講師 ・ReBorn(再生)サロン事業&スクール事業 代表 ・認知症予防サポート協会
2度の重度の鬱病を克服した経験から 「人はいつでも生まれ変わることが出来る」をコンセプトに ReBorn(再生)という名で、サロンを開業して10年。フランス式アロマの先駆的ブランドbiossentielを研究し独自のトリートメントを開発。 全国に技術を広める活動を行っている。
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