ライフイベントを機に、自分自身の働き方について悩んだり、さまざまな決断を強いられたりする方は多いのではないでしょうか?
出産をして守るべきものが増えた女性は、母性あふれ親としての幸せを噛み締める反面、今までと同様に働けないことに行き詰まりを感じたり焦って不安になったりしますよね。
前回のコラムでは、働きやすい勤務体制や制度の利用についてお話ししました。
今回は、その時々の状況における自分の立場を認め理解したうえで長期的なキャリアを描くためのポイントをお伝えいたします!
目次
女性の社会進出の現状
令和3年版厚生労働白書(厚生労働省)によると共働き世帯は年々増加傾向にあります。また、男性雇用者と無職の妻からなる世帯との開きはかなり大きくなってきています。
参照:内閣府ホームページ > 男女共同参画白書 > 令和4年版
日本は「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方が根付いていました。しかし、現代社会ではジェンダー平等などの人権意識が浸透しています。
時代の変化に合わせて人々の価値観や考え方も変化してきていますよね。
日本のGGI(ジェンダー・ギャップ指数)
しかしながら、女性活躍の場が推進されてきているとはいえ、まだまだ課題はあるでしょう。世界的に見ても日本のGGI(ジェンダー・ギャップ指数)は非常に低いのが現状です。
参照:内閣府ホームページ > ジェンダー・ギャップ指数(GGI)2022年
GGI(ジェンダー・ギャップ指数)とは各国内の男女間の格差を数値化し、世界経済フォーラムがランク付けしたものです。経済分野、教育分野、政治分野及び保健分野のデータから算出される男女格差を測る指数で、0が完全不平等、1が完全平等を意味します。
2022年のGGIの日本の総合順位は、146か国中116位で、分野別にみると
- 教育 1位
- 健康 63位
- 経済 121位
- 政治 139位
となっており、教育・健康分野では世界トップクラスであるのに対し、経済・政治分野では世界に大きなおくれを取っています。
女性の『長期的なキャリア』の描き方と、もっと活躍する方法
女性の社会進出の課題になっているのは下記3点だと筆者は考えます。
- 「育児・介護は女性がやる」という固定概念が男女共にまだあること
- キャリアを形成する上でお手本になるロールモデルが少ないこと
- 柔軟な勤務体制が整っていないこと
筆者は娘が1歳半の頃からフルタイム勤務でセカンドキャリアをスタートしました。「育児をしながらフルタイムで働くのは無理があるのでは?」と感じていたパートナーへの反骨心から「すべて私一人でやってやる!」と意地になり育児・家事・仕事をこなしていました。
その結果、体調を崩し働き方やパートナーとの役割分担を見直すことになったのです。
今になって振り返ると、幼い子どもを育てている自分にとって必要な勤務体制が整っているかどうかに着目して仕事選びをしなかったため、ワーク・ライフ・バランスを考えた働き方ができていませんでした。周りにはロールモデルとなるような女性はおらず、長い目でキャリアを考えられずに、一人で理想を追い求めてストレスを抱え、しんどくなる一方でした。
長期的なキャリアを描く3つのポイント
今は育児がとても大変で手一杯になっているかもしれませんが、ずっとそれが続くわけではありません。
子育てに手がかかるのも今だけ。少し先を見据えて長期的なキャリアを考えてみましょう。そのためのポイントを3つお伝えします。
【ポイント1】固定概念を払拭しよう
「育児・介護は女性がやること」といった固定概念はありませんか?女性自身が固定概念を持って自分で自分を苦しめていることも大いにありますが、パートナーや家族、上司など、周囲がそういった固定概念を持っていることで女性を悩ませている場面も多くあります。
育児や介護は女性だけでなく、パートナーや支援機関を頼り、勤め先や同僚にも理解してもらい「みんなでやる」「お互いさま」という意識に変えましょう。
【ポイント2】ロールモデルを持とう
同じようなライフイベントを経験し、しなやかに働き続けている人が身近にいますか?その方をロールモデルとし目標としたたり助言を求めたりすることで自分自身の成長に繋がります。
ロールモデルが見つからない方は思い切って環境を変えてみるのもよいでしょう。女性支援に手厚い企業は下記のような取り組みをしています。
- 出産・育児・介護を経験しながら仕事を続けている女性の社内ネットワークを発足させる
- 出産・育児・介護を経験した女性の正社員・管理職を増やす
「女性の社内ネットワークがあるか」「管理職の女性比率」「どのような人材が管理職に就いているのか」といったことに着目して職場選びをしてみるのもよいでしょう。
【ポイント3】働きやすい勤務体制・制度を利用しよう
テレワークや時短勤務の許可、フレックス制度導入、有給休暇制度の改善、施設内保育所を設置、子どもの看護休暇・介護休暇の取得など、柔軟な勤務体制の見直しを図る企業が増えています。
また、パートからの正社員登用があったり、ライフステージによって変化を加えられるキャリアアップ制度を設ける企業もあります。
2022年には『改正育児・介護休業法』も施行されました。詳しくは前回のコラムをご覧ください。育児休業の分割取得や夫婦間での交代取得が可能になり、女性だけではなく男性も共に育児休業を取得することを国が後押ししています。
小さな子どもがいる女性は復職がしやすくなり、第2子・第3子の出産を見据えたり、長い目でキャリアデザインをしたりしやすくなったのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。自分に合ったキャリアを描くヒントになれば筆者も嬉しく思います。
「私には無理ではないか」「子育て中の今の私にはハードルが高すぎる」と決めつけず、長い目で見て「理想の働き方に到達できるか」「この先、理想としている人生が送れるか」を考えてみてください。自分自身や家族のために、しっかりキャリアデザインをしていきましょう!
次回コラムは2023年7月26日公開予定です。お楽しみに!
鵜飼 千登静/Chitose Ukai
夢叶いJALの客室乗務員として国内線・国際線に乗務。その後、結婚、妊娠。しかし、育児休職中にまさかのJAL破綻。思いもよらぬ形で早期退職というつらい選択を余儀なくされる。
キャリアが途切れる不安から、娘1歳半より講師としてセカンドキャリアを築くが、小さい我が子を抱えての社会復帰に心身ともに限界に近づき、ひとり働き方改革!
現在はフリーランスの講師×キャリアコンサルタントとして、行政セミナー、企業研修、教育機関(高校・専門学校・大学)講義、就職・キャリアアップ支援など人材育成をメインとする。一人ひとりの個性や現在の状況と課題に着眼し、その方が描く未来に近づけるようファシリテーターとしての役割で人を導く。
・ホームページ Career Path Design