「これから個人事業主として働いてみようかな」と考えているあなた、ワクワクする気持ちと同時に、お金のことって不安ですよね?
このコラムでは、5回に分けて、個人事業主になる時に知っておくと役立つお金の情報を分かりやすくお伝えしています。
前回は、社会保険について解説しました。 今回は、ニュースでも耳にする「インボイス制度」について、具体的に解説します。
目次
インボイス制度とは「消費税の計算に使える請求書」のこと
「インボイス制度」と聞くと、なんだか難しそうと思われる方も多いのではないでしょうか?
しかし、インボイス制度は、これから個人事業主として働く上で知っておくべき大切な制度なのです。
インボイス制度の正体:消費税の新しいルール
インボイス制度は、正式名称を「適格請求書等保存方式」と言います。
適格請求書等とは、簡単に言うと、売り手が買い手に対して発行する「消費税の計算に使える請求書」のことです。 これまで、一般的な請求書でも消費税の計算に使用されていましたが、インボイス制度では、この「適格請求書等」と呼ばれる、インボイス番号が記載された特別な請求書が導入されました。
この特別な請求書を使うことで、消費税の計算がより正確になり、皆が公平に税金を支払えるようになるのです。
インボイス制度は2023年10月1日から始まりました
この新しいルールは、2023年10月1日から始まりました。現在(2024年10月時点)は、すでにルール導入から1年が経過しています。
インボイス制度を具体例で考えてみよう!
「インボイス制度」がどのようなものか、分かりやすく説明するために、カフェとケーキ屋さんの関係を例に考えてみましょう。
ケーキ屋さんを開業!
あなたが、美味しいケーキ屋さんを開業したとします。そして、あなたは近所のカフェにケーキを卸すことになりました。
カフェは消費税の納税額を減らすことができる!
あなたの取引先(カフェ)は、あなたのケーキを仕入れる際に、消費税を支払います。そして、カフェの顧客にケーキを販売することで消費税を得ます。
この時、取引先(カフェ)は、ケーキを仕入れる際に支払った消費税を、カフェの売上にかかる消費税から差し引くことができます。
これが「仕入税額控除」という仕組みです。
具体的には、取引先(カフェ)には以下の控除が適用されます。
- カフェの売上:50万円(消費税5万円)
- ケーキの仕入れ:10万円(消費税1万円)
- 納付する消費税:5万円 – 1万円 = 4万円
インボイス制度の導入による変化
インボイス制度が導入されて以降、この「仕入税額控除」を受けるためには、あなた(ケーキ屋)と取引先(カフェ)の両方が「インボイス発行事業者」になっている必要があります。
つまり、あなたがインボイス発行事業者になっていない場合、取引先(カフェ)は仕入税額控除を受けられず、消費税を多く払うことになるのです。
取引先は、あなたにインボイス発行をお願いするかも?
取引先(カフェ)は、消費税の負担を減らすために、あなた(ケーキ屋)にインボイス発行事業者になってくれるようお願いするかもしれません。
もし、あなたがインボイス発行事業者にならない場合、カフェは他のケーキ屋さんから仕入れることを検討する可能性もあります。
インボイス登録をするメリットとデメリット
インボイス登録をすることは、メリットとデメリットがあります。
インボイス登録のメリット
取引先との関係維持
大手企業や法人との取引では、インボイス発行が必須となるケースが増えています。そのため、インボイス発行事業者になっておくことで、取引がスムーズになります。
信頼性の向上
インボイス登録をしていることは、きちんと税金を納めている証となり、取引先からの信頼度が高まります。
仕入税額控除の恩恵
仕入先もインボイス発行事業者である場合、自身の仕入れにかかった消費税を、全額控除できます。
インボイス登録のデメリット
事務作業の増加
正確な記録と申告が必要になるので、事務作業が増える可能性があります。
消費税の納税義務
一般的に個人事業主は、売上高が1,000万円以下であれば非課税業者として、消費税は納めなくても済みます。しかし、インボイス登録をすることで、売上高に関わらず、課税事業者となるため、消費税の納税が必要になります。これは大きな負担になる可能性があります。
インボイス登録は、本当に必要?
「個人事業主として働き始めたら、自分もインボイス登録しなくてはいけないの?」という疑問にお答えします。
インボイス登録は、必ずしも義務ではありません。あなたの事業規模や取引先との関係性などを考慮して、必要かどうかを判断しましょう。
インボイス登録が必要なケース
大きな会社と取引する予定がある場合
取引の条件として、インボイス発行を求められる可能性があります。
将来的に事業を大きくしたい場合
インボイス登録は、将来の事業拡大にも役立ちます。
仕入れにかかった消費税の負担を少しでも減らしたい場合
インボイス登録することで、仕入れにかかった消費税の負担を減らせ、お得になります。
インボイス登録しなくても良いケース
個人のお客さまがメインの場合
一般エンドユーザー向けのビジネスであれば、インボイス発行を求められることは少ないでしょう。
売上高が1,000万円以下で、免税業者でいたい場合
インボイス登録をしなければ、基本的には消費税は支払う必要はありません。
子育てママのためのインボイス制度対策
インボイス制度を踏まえて、子育てママが個人事業主として働く際のポイントをまとめてみましょう。
自分の事業規模を考えよう!
まずは、どの程度の規模で事業を始めたいか、じっくり考えてみましょう。
- 副業程度で、細く長く続けていきたいのか?
- 将来的に大きく事業を拡大したいのか?
取引先を想定しよう!
どんな人と取引する予定ですか?
- 個人のお客さまと取引する予定ですか?
- 企業と取引する予定ですか?
インボイス制度に関する最新の情報をチェックしよう!
事業の成長に合わせて、インボイス登録の必要性は変化する可能性があります。状況に応じて柔軟に対応できるよう、常に最新の情報をチェックしましょう。
インボイス制度は、新しいチャンス!
インボイス制度は、最初は難しく感じるかもしれません。しかし、個人事業主として働くための大きな障壁ではありません。むしろ、この制度をきっかけに、自分の事業をより明確に計画し、成長させるチャンスと捉えることができます。
子育ての経験を活かしたビジネスアイデアや働き方がきっとたくさんあるはずです。インボイス制度を理解し、適切に対応することで、安心して個人事業主としての一歩を踏み出せます。
新しい働き方にチャレンジする全てのママを、心から応援しています!
三好夏枝/Natsue Miyoshi
大阪経営クリニック株式会社 代表取締役
メーカーの新規事業開発部門でマーケティング・営業に従事。
出産を機に、キャリアや働き方を見つめなおし、不動産鑑定士の国家資格を取得。士業に転職するも、転職1年目と1歳児の育児、起業1年目の夫のサポートで、家庭と仕事の両立に苦心、限界を感じて新たな道を模索する。
その後、大阪経営クリニック株式会社を設立し、個人事業主や小規模事業者の売上アップ支援、ライティング業を軸に活動。「自分らしく輝く大人」を増やすことで、子どもたちが「大人になって働くことは楽しい」と将来に希望が持てる地域・社会づくりを目指している。